オープンサイエンスって何?

1. オープンサイエンスって何? なぜ、それを進めるの? ずっと続くの?

オープンサイエンスとは

オープンサイエンスは、科学的な知見や、それらが生み出されるプロセスをよりオープン、あるいはよりアクセス、利活用可能とし、新たな知見を生み出す活動に、社会も含む、より多くの人々の参加を得ることで、学術界にとっても、社会にとっても、より大きな便益を得ようとする取組みです。

政策的にはEUが2016年から「デジタル単一市場政策」という経済政策の一環として開始しましたが、ユネスコの「オープンサイエンスに関する勧告」が2021年に193カ国により採択されて以来、「オープンサイエンス」は学術をより開かれたものにするための世界的な取組みとなっています。

オープンサイエンスの定義
(ユネスコ「オープンサイエンスに関する勧告」から)

オープンサイエンスとは、多様な運動及び実践を組み合わせた包摂的な構成物であって、多言語の科学の知識を全ての人が自由に利用し、アクセスし、及び再利用することができるようにし、科学及び社会の利益のための科学の協力及び情報の共有を拡大し、並びに伝統的な科学コミュニティを越えた社会的関係者に対して科学的知識の創出、評価及びコミュニケーションに関する過程を開放することを目的とするものをいう。

オープンサイエンスは、全ての科学の学問分野及び学術の実践の側面(基礎科学及び応用科学、自然科学及び社会科学並びに人文科学を含む。)から成り、並びに次の主要な柱(オープンサイエンス知識、オープンサイエンスの基盤、科学的コミュニケーション、社会的関係者の開かれた関与及びその他の知識の体系との開かれた対話)を基礎とする。

(出典)    文部科学省ウェブサイト「オープンサイエンスに関する勧告(採択年:2021年 第41回ユネスコ総会)」

オープンサイエンスを進める理由

【学術雑誌の購読料高騰への反発】

オープンサイエンスに向けての動きは、学術雑誌の購読料高騰への反発から生まれた、2000年代初頭の「学術論文のオープンアクセス運動」に直接の淵源があります。つまり、アカデミアが初めの動きを作っています。

【説明責任、透明性確保、税金の効率利用】

しかし、それだけでなく、学術研究活動に多大な公的資金がつぎ込まれていることからくる説明責任や透明性確保の必要性、税金をより効率的・効果的に利用する必要性なども、オープンサイエンスを政策的に進める大きな背景理由となっています。高等教育は戦後、大きく規模拡大しており、社会の誰しもが自身の人生において関わるものとなっています。それだけに、その維持に多額の税金が必要とされており、これを負担する納税者がより多くの恩恵や便益を感じられる必要があるのです。

【研究不正防止、研究の再現性確保】

加えて、研究不正がなかなか後を絶たなかったり、分野によっては意図的ではないにしても、研究成果の6-7割の再現性が確認できなかったりすることも、研究成果の根拠となる資料やデータを保存・公開する動きの背景にあります。他者の生み出した知見の上に新たな知見を重ねることが学問発展の基礎にある以上、研究の再現性が低いと、学術が根底から揺らぎかねない事態となります。

【デジタル時代の研究の新たな可能性、研究DX】

一方、21世紀に入り、デジタル化の進展とインターネットの普及と共に、研究情報をより多くの人々と共有したり、複数分野の情報を組合せて分析したりできるようになったことも、オープンサイエンスの動きに繋がっています。前述のように、学問は元々、開かれたものですが、「オープンサイエンス」とカタカナで記述し、これを新たなイニシアティブとして取り上げるのは、デジタル化により飛躍的に高まった研究成果や研究プロセスの共有可能性を最大限に活かすためです。そのようなこともあり、オープンサイエンスは「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の方向性と重なり、「データ駆動型科学」や「AI in Science」と並行して推進されています。

【多様な研究情報の共有、学際研究・文理融合、社会的課題解決・社会的インパクト】

これまでは論文といった研究成果を郵送で共有するのが精一杯でしたが、近年は研究データやプログラムコード、画像・映像なども保存・共有できるようになりました。単一の分野内だけでなく、分野横断的なデータ連携、共同研究も可能です。社会のデータも組み合わせて、社会的課題の解決も可能となり、研究において社会的インパクトも求められるようになりました。。

【学術の包摂性・多言語化、ソーシャルエンゲージメント】

更に、学術情報だけでなく人も、研究活動に遠隔から参加可能となったため、ユネスコの「オープンサイエンスに関する勧告」では、研究活動における平等性や包摂性を掲げ、グローバルサウスや非英語圏の研究者の学術活動への参加拡大を推進しています。また、社会の様々な主体を組み入れて研究を進めることができるようになったことから、社会連携や地域連携が推進されるようになっています。

【チームサイエンス、研究評価改革、多様な研究貢献の評価】

このように、多くの主体が研究活動に関わる事が出来るようになると、これまでの、ノーベル賞を頂点とする「個人研究」ではなく、複数のメンバーがそれぞれのスキルを活かして協力する「チームサイエンス」の方が、より大きな成果に繋がるといった考えが生まれてきました。ただし、その場合、論文の主著者ばかりが評価されるのでは、チームが成立しないことから、研究活動への様々な貢献を評価する動きが出てきています。初めの一歩では、研究者にとって煩雑なデータ公開作業を評価するといったことがありますが、EUでは現在、60カ国900機関近くが参加し、それぞれの国や機関における研究評価制度を見直す大きな動きに繋がっています(研究評価促進連合(CoARA))。これは、研究活動がトップ論文からばかり評価され、研究競争が厳しくなりすぎるあまり、アカデミアの道を志す者が各国において減退していることからも、CoARAに参加する国・機関により真剣に捉えられるようになっています。

オープンサイエンスのこれから

「オープンサイエンスを進める理由」に挙げたように、オープンサイエンスは、高等教育・学術界が21世紀に直面する多くの課題を背景として進められています。「オープンサイエンス」という用語自体は、科学技術政策を進めるために登場した用語のため、徐々に使われなくなっていく可能性はありますが、ここに挙げた21世紀の多くの課題は容易には消えてなくならないため、この用語のもとで進められている様々な取組は、時代の方向感として変わることなく、続いていくと考えられます。