図書館について

 

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附属図書館長 鈴木廣志

 本年4月より附属図書館長を拝命いたしました鈴木廣志です。所属は農水産獣医学域水産学系で、今まで、図書館とはユーザーとしての面からしか関わっておらず、図書館の運営面では初心者です。ただ、県立博物館や大学総合研究博物館の運営には若干かかわった経験があり、図書館運営と共通する点もあるかと思っています。その経験をもとに、歴代の館長並びに図書館職員の努力により発展を遂げてきた附属図書館を、より一層充実させるべく微力ながら貢献することができればと考えております。
図書館に対する私のイメージは、静かに読書をする人、あるいはヘッドフォンをつけて音楽を楽しむ人が集う場所というものです。静穏な環境の下で文字や文章あるいは音を通して、直接会えない古今東西の人たちの「知」と接し、理解し、身につけ、自身の「知恵」を高めていく場というのが、図書館の基本的イメージです。高校に入り大学進学を考え始めてから、大学、大学院へと進むにつれ、図書館に対するイメージは変化してきました。それまでの「知」を理解する、「知恵」を身につけることに加え、過去から現在までの「記録」と「情報」を調べ、学習し、そして研究する場となりました。自然科学系の生物分野、特に、生物の分類から研究者生活をスタートさせた私にとって、図書館は、分類に関する基本的な考え方とその変遷、分類の技術的方法とその変化、そして現存する生物そのものに関する記録と情報がぎっしりと詰まった宝の山となったのです。

 研究に専念できた大学院生時代には、大学の図書館や実験所の図書室に行き、日長一日、18世紀以降に出版されたちょっとかび臭い文献や図書、あるいは最新の学術雑誌を探し回っていました。記録や情報の探索は国内の図書館に止まらず海外の図書館にも及び、文献複写依頼をして長い時間待たされながらも貴重な情報(文献)を手にした時や、在外研究時代に直接海外研究施設の図書館や古書店で希少な情報(図書)を見つけた時には小躍りして喜んだものでした。ユーザーとしての私から見て、ここに大学の附属図書館が持つ市中の図書館と異なる特質があると考えます。つまり、附属図書館は、知恵を高めるために、学習を支援するために、そして研究を支援するために、古今東西の知、記録、情報を集積し、保存し、活用できるようにする組織だと思うのです。これら対象となる知、記録、情報の相対的価値は受け手側の状況によって変化しますが、その本質的価値は不変であると考えます。しかしながら、すべてを集積できない状況下では、これら図書館の対象とすべき知、記録、情報を適切にセレクトし、安全に保存し、的確に発信するためにハード面並びにソフト面で充実させるのが附属図書館の重要な責務と考えています。

  近年のIT技術やアプリケーションソフトの発達で、個人が簡単に情報を集積し、発信できるようになりました。スピーディーな情報の交換が要求されている現在の学習や研究の現場では、これらの技術をきちんと使えばとても良い状況が形成できます。反面、匿名性の高い掲示板での「集団リンチ」的な活動や、昨年の熊本地震時の善意の行動によるパニック的な情報拡散が「情報爆発」を起こしてしまったように、情報の適切な選択と時系列を考慮した的確な運用をしないと大変な状況になることは多くの人が知り、体験していることと思います。これはIT技術を使いこなすべき人の未熟さに最大の原因が考えられます。IT技術の活用方法を教育する「情報リテラシー教育」の重要性が叫ばれているのも当然のことで、この情報リテラシーの内容そのものは、今まで行われてきた図書館業務と大きく重なるものであります。学生等への「情報リテラシー教育」は、近年附属図書館が行うべき責務の一つと考えており、平成28年度の初年次セミナーⅠにおける資料検索・収集の教授を皮切りに、今年度からは、学部・学年別に体系化した附属図書館情報リテラシープログラムの提供を開始しました。
  同時に、従前から提言されているとおり、大学で学ぶ学生たちによりよい学習環境を提供することも附属図書館の重要な役割の一つです。アクティブ・ラーニングや課題解決型学習を多くの科目で導入し、受け身の学習から、主体的学習への転換といった大学教育の変化は、ラーニングコモンズの設置など図書館のあり方にも影響を与えています。更に、ハード面での対応だけではなく、ソフト面での対応、つまり適切な助言と的確な情報提供を行う人材の充実もあって、はじめて学習環境の総体的な充実が実現すると考えます。

  いずれにしても、基本的責務を忘れずに様々な役割を果たし、かつ時代の変化に適切に対応した図書館運営を心がけなければならないと考えています。私は、図書館運営では素人ですが、私の周りには長年培ってきた英知を持ったスタッフがいます。スタッフの協力を得ながら、少しずつ図書館並びに図書館をとりまく状況について勉強を重ね、鹿児島大学の教育研究の発展にさらに貢献しうる附属図書館に育てていければと思っています。

平成29年6月